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23年前の失敗

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23年前の失敗

2024年02月23日

塾の先生になりたてのころ

「社会」を専門に教えていた。

 

 

 

担当の生徒は300人ほどおり、

毎日必死で予習しながら、授業準備をしていた。

 

 

 

 

当時中学3年生のある女の子は

西和中学校に通う「桐蔭高校」志望の生徒だった。

 

 

 

社会がとにかく苦手で、

 

中学1年生のころから塾で社会の授業を受けていた。

 

 

 

 

僕は彼女が中3のとき担当することになった。

 

 

 

当時の僕は「新米の先生」

 

 

社会の先生としての実力も実績も自信もなかった僕だが、

 

明るく楽しく教えることだけはできていた。

 

 

 

 

 

彼女もそんな僕の元気なところが良かったのか

 

少しずつ社会も好きになり、勉強も頑張り始めてくれていた。

 

 

 

 

 

 

’3月の入試まであと100日!

 

この調子で頑張れば絶対に間に合う!合格できる!’

 

 

受験生を教えた経験は何もなかったが、

僕の中では確信めいたものになっていた。

 

 

 

 

 

実際それだけ彼女はがんばっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そんな1月のある日、ある知らせが届いた

 

 

 

併願で受験した私立、彼女は不合格となった。

 

 

 

 

 

彼女は泣いていた。

 

 

 

 

僕はまだ新米の先生

ことのなりゆきを見守るしかなかった。

 

 

 

 

 

先輩の先生が3者面談をおこなった。

 

 

 

 

 

 

「どうしても桐蔭高校にいきたい!」

 

彼女はそう話したらしい。

 

 

 

 

 

 

しかし、結局志望校をひとつおとすこととなった。

桐蔭高校をあきらめたのだ。

 

 

あまりの泣く姿にみんな声をかけられなかったらしい。

 

 

 

 

 

彼女が志望校を変えないといけなかった理由は、

 

 

「まだまだ社会が苦手で

このまま受験するのは危険だ」ということだった。

 

 

 

 

 

僕が彼女の未来を奪ったんだと思った。

 

 

 

 

 

3月までに間に合えばと思っていた。

 

そう思ってがんばっていた。

 

だけど、受験校はそれまでのテスト結果や私立の結果で決めていく。

 

 

 

 

いくら3月に間に合っても、

それは受験校決定の材料にはならないのだ。

 

 

 

せめて1月までには成績をあげておかないといけなかったのだ。

 

 

 

 

いろんなことがわかっていなかった。

 

 

 

 

悔やんでも悔やみきれなかった。

 

「担当が僕じゃなかったら」

 

「もっとベテランのいい先生だったら」

 

 

 

 

 

 

そのあと彼女の勉強する姿をみるのはつらかった。

 

僕が彼女を泣かせたんだとばかり思っていた。

 

 

 

 

 

 

彼女はもちろんその高校に合格した。

 

僕のなかでは、うれしさよりもやはり悲しさのほうが大きかった。

 

 

だけど彼女はそうやって高校生になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから23年

彼女はいまだに年賀状をくれる。
高校卒業の年には

「この高校にきてよかったと思う」

 

そう綴ってくれていた。

 

 

 

 

 

 

だけど、あのときの後悔はいまも消えることはない。

 

自分が未熟だったことで悲しい思いをさせてしまったあの後悔。

 

 

 

 

 

だからこそ、いまの僕があると思っている。

 

彼女が教えてくれたこと

 

あの日彼女に流させてしまった涙は

今年もまたこうやって

いま目の前にいる受験生にいきている。